First case / Interview

金網は、理由があって
今の形になっている

取材日 2026.08.25 聞き手 志水康太(合同会社ICHI.)/ 齋藤肇(ドラッグストアー・カミヤ) 全文6分 / 要点は冒頭の3行で30秒

この記事について

東三河ミライ会議2040は、実在する地元企業1社の2040年を、業種の違う経営者たちで本気で考える会です。

第1回は2026年10月8日(木)16:00から、共催のMUSASHi Innovation Lab CLUE(豊橋駅前)で開きます。

題材になってくださるのは、豊橋で金網をつくる株式会社伊勢安金網製作所

この記事は、当日を迎える前に4代目の安藤様へ35分お話を伺った記録です。これだけ読んでいただければ、当日の議論に入れます。

お急ぎの方へ / この記事の3行
  1. 金網は「風は通すが虫は通さない」「向こうが見える」「衝撃を吸収する」。どれも理由があって今の形になっています
  2. 製品の約7割が公共工事向け。人手不足と素材の変化で、今のままだと緩やかに縮んでいきます
  3. 安藤様は「網のこと以外は分からない」と外からの視点を求めています。土木建築に絞る必要はありません

金網の会社と聞いて、何が売れていて何に困っているのかを思い浮かべられる人は、ほとんどいないと思います。

読み終えるころには、意外とよく考えて作られている製品だと分かるはずです。

01 / Company

豊橋の商店から始まり、いま2社で金網を作って売っています

前身は「伊勢安商店」。曲げわっぱに金網を張った篩や花籠を手作業で作って売る商店でした。

法人化からおよそ75年。安藤様は4代目にあたります(※1)

3人の仕事が、いまの会社をつくった
初代創業者安藤様の曽祖父
つくる力を入れたドイツ製の自動製織機を導入し、クリンプ金網(焼肉の網に近い種類)の生産量で国内最大(※2)
2代目現社長安藤様のお父様
会社の形を整えた借入の多かった財務を立て直して無借金(※3)。経営理念「Wirenet Creation」を定め、周辺加工・用途開発・販売会社の分社まで広げた
4代目安藤様今回の窓口
2040年を考えている「網のこと以外は分からない」と、外からの視点を求めてこの会を引き受けてくださった
株式会社伊勢安金網製作所の工場外観
豊橋市内の工場。経営理念「Wirenet Creation」を掲げています。画像:株式会社伊勢安金網製作所 提供

いまは作る会社と売る会社の2社体制です。

強みは織れる種類の多さと、1枚から1万枚までの数量対応。網目も線の太さも、お客様ごとに変えています。

02 / What is wire mesh

網戸もバックネットも、そうでなければいけない理由があります

ここが、今回のインタビューでいちばん面白かったところです。

いちばん目が細かい金網は、実は網戸だそうです。

金網の「粗さ」と、伊勢安金網製作所の位置
細かい
網戸。これも金網です。線が細く、目がとても小さい
中間
学校や高速道路のフェンス、土木建築資材主力
粗い・太い
建物の基礎に入る溶接金網。ここまでくると鉄筋に近くなる

「網戸って本当によくできてるなと、我ながら思うんですよ」

安藤様
網戸が同時に満たしている条件
風は通す
鉄板ではできない
虫は通さない
目が大きいと入ってしまう
燃えない
金属だからできる
薄いシート状で扱える
金属なのに、あの薄さ
一箇所切ってもほつれない
何箇所か切らないと穴が開かない=防犯性

バックネットの目はボールより小さく、線は突き破られない太さ。高速道路のフェンスが細かいのは小動物が入り込まないためです(※4)どれも、そうでなければいけない理由があります。

金網に石を詰めたエクステリア製品(ガビオンフェンス)
金網に石を詰めたエクステリア製品。網戸から土木資材まで、用途によって形が変わります。画像:株式会社伊勢安金網製作所 提供
鉄でありながら、金網はこれだけの性質を同時に持っています
空間性風・光・水を通す
視認性向こう側が見える
防犯性切ってもほつれない
弾性たわむ
靭性衝撃を吸収する

この5つの組み合わせで用途が決まります。2040年の風景の中で、この性質が要る場面はどこにあるでしょうか。

当日の入口

「金網」という製品名で考えると、フェンスの話で止まります。けれど機能で考えると、要る場面は他の業界にもあるかもしれません。

03 / The outlook

今のままだと、緩やかに縮んでいきます

約7割が土木建築資材

つまり、公共工事が主なお客様ということになります。

その現場で、変化はもう起きています。職人の人手不足で、いま資材に求められるのは省力的に施工できること・軽くて同じ強度が出ること・環境負荷が低いことの3つ。

条件が変われば、答えも変わります。安藤様が挙げたのは、これまで金網が使われてきた工事が、別の製品や素材に置き換わる可能性でした。

2040年も楽観はされていません。災害はなくならず国土強靭化の方針もあるので、需要がすぐ消えることは考えにくい。ただし、増えるとも思っていない。

「大きく増えることはないとは思うんですけれども、少なくとも緩やかに横ばいになっていくか、緩やかに少しずつ減少していくというのが、この防災分野なのかなと考えてます」

安藤様
01 原材料 鉄が高くなる

国内の鉄は需要が縮む方向。原材料もエネルギーも上がりやすい

02 予算 配分が読めない

出せるお金には限りがあり、配分先も1つではない

03 人口 使う人が減る

日本の人口は減っていく

金網業界には、誰もが知っているような大手が存在しません。全国の中小企業が担っています。

それでも、ありたい姿ははっきりしています

技術がAIへ変わっても、技術力ではリーダーシップを発揮し続けたいお客様起点の製品開発を大事にしたい豊橋の企業として地域に貢献し続けたい。事前にそう書いてくださいました。

04 / Why

引き受けてくださった理由は、3つありました

理由 01 豊橋への思い

75年、この土地に育ててもらった。ご自身も人生の半分を豊橋で過ごしてきた(※5)

理由 02 外の視点が欲しい

「網のこと以外は分からない」。自分たちで仮説を立てるより、外の人に指摘してほしい

理由 03 人とのつながり

豊橋に戻ってきたばかりで知り合いが少ない。一緒に未来を考えられる人と出会いたい

2つめが、参加者にとっていちばん大事な一言だと思います。

「我々は網のことばっかり考えているので、網のこと以外だと、あんまり分からないことがたくさんあるんです。自分たちで格好をつけて仮説を立てるのではなくて、皆様からご指導をいただいて、何か引っ掛かりになるところがあれば」

「我々が気づいてないところって、たくさんまだあると思うんですよ。金網じゃなくても何か金網っぽい製品が活用できるところって、あるんじゃないのかなと」

安藤様

土木建築に絞ってほしいという要望はありませんでした。期待されているのは、こういうことです。

「金網のことを知ってもらえて、金網ってなんか楽しそうだな、いいなって思ってもらえる。ファンができることが、我々の会社の成長につながると思ってます」

安藤様

05 / Before the session

当日は、ここから始めます

10月8日は、この記事を共通の出発点にします。会社紹介からは始めません。

当日までに、考えてみていただきたいこと

  1. 2040年の東三河は、どんな風景になっていると思いますか。ご自身の事業から見える範囲で構いません。
  2. その風景のなかで、金網の機能(風は通すが虫は通さない/向こうが見える/衝撃を吸収する)が要る場面はありますか。製品名ではなく機能で探すのがコツです。
  3. もし自分がこの会社の人間だったら、まず何から試してみますか。

AIの使いどころ

正解を用意する必要はありません。当日は人が仮説を出したあとにAIで視点を広げます。先にAIに聞くと一般論しか出てこないので、最初は人の頭で考えます。

網をいちばんよく知る会社が「網以外は分からない」と扉を開けてくださいました。当日は遠慮なく、外からの視点をお持ちください。

Event

東三河ミライ会議2040 第1回

MUSASHi Innovation Lab CLUEの内観。窓際にテーブルと椅子が並ぶワークスペース
日時
2026年10月8日(木)16:00〜19:00終了後、30分ほどの交流会
会場
MUSASHi Innovation Lab CLUE豊橋駅前・ココラアベニュー3F
参加費
無料定員6〜10名
開催概要とお申し込みへ